ペースメーカ留置術
病気
何らかの原因で心臓の拍動が止まったり著明に遅くなると、全身への血液の循環が不十分になって種々の障害が出たり、失神したり時に生命に危険が及びます。眼前暗黒感、めまい、ふらつき、動悸、息切れなどの症状もあります。
心臓には、収縮を命令する指令センター『洞結節』と、その指令を伝える『刺激伝導系』とがあり、洞結節からの指令は心房、心室の順に伝わり心臓が収縮します。
完全房室ブロック
洞結節からの命令を伝える刺激伝導系という導線が切れてしまった状態で、心室は心房とは別に勝手にゆっくりとしたリズムで収縮し、意識消失や突然死の危険があります。
洞不全症候群
洞結節の異常により起こります。収縮の指令の回数が40回/分以下と極端に少なくなったり、突然収縮の指令が出せなくなって5秒も6秒も停止し失神したりする病気です。
治療法
左または右胸の鎖骨の下付近から、注射する要領で電気を伝える細い導線(リード)を心臓まで挿入して、ペースメーカー本体と接続します。
本体は、直径4cm前後の大きさで重さ20g程度の円盤状の小さなもので、皮膚を5cm程度切開して、鎖骨の下の皮膚と筋肉の間に植え込みます。本体は精巧なコンピューター機能を備えた電池で、心臓の電気的活動を常に感知して、必要な場合に電気を発して心臓を刺激し、突然の心停止や著明な徐脈や頻脈に対応します。
標準的な治療スケジュール
術前にペースメーカーの必要性や植え込む機種の検討のために、心臓電気生理学的検査を行います。足の付け根から電極カテーテルという細い管を心臓に挿入して、心臓の中から詳しい心電図をとる1~1.5時間の検査で、2泊3日の入院が必要です。
ペースメーカー植え込み術は、手術室で局所麻酔で行う1~1.5時間程度の手術ですが、切開した皮膚の抜糸が終わるまでの通常7~10日間の入院です。植え込んだ腕の挙上は90°までに制限されますが早期退院は可能で、希望があれば外来で抜糸します。