検査・治療について
経皮的冠動脈形成術
病気
心筋を栄養する冠動脈の血管壁に生じた粥腫が大きくなって内腔を狭窄し、心筋への血流不足が生じれば狭心症として胸の絞約感を生じ、粥腫に血栓が付着し血管を完全に閉塞すれば、急性心筋梗塞として強烈な胸の苦悶感が長く持続します。
最近発症の狭心症や、狭心症発作回数、痛みの程度や持続時間などが増悪してくる場合は、急性心筋梗塞に移行する可能性が高く、早急に入院治療が必要です。もし急性心筋梗塞に移行すれば10%~20%の生命の危険もあり狭心症の段階で治療することが重要です。
治療法
開胸手術をせずに、局所麻酔で手首や肘や足の付け根の血管から、カテーテルという細い管を使い、狭窄した血管を、バルーン(風船)やステント(網状の筒)などで押し広げる治療法と、狭窄部の粥腫を削り取るアテレクトミー治療とがあります。
胸を開いて全身麻酔で行うバイパス手術に比べ患者さんへの負担が少ないという利点がありますが、治療した血管が再び狭くなる”再狭窄”を起こす場合が15~20%あります。しかし、2004年8月から、再狭窄率が5%程度の優れた『薬剤溶出性ステント』が、日本でも使用できるようになっています。
標準的な治療スケジュール
狭心症や心筋梗塞が疑われたら冠動脈造影検査などを行い、治療方針を決定します。検査は1時間以内に終了しますが、1~2泊の入院が必要です。
経皮的冠動脈形成術(カテーテル治療)の場合、手首からなら治療当日、足の付け根からでは治療前日の入院で、治療後通常2~3日で退院可能です。カテーテル治療は通常1~1.5時間程度ですが、状況により2時間を超える場合もあります。足の付け根から治療しても止血デバイスを使えば、床上安静は3~5時間でその後は座位が可能です。退院後も外来通院が必要です。
経皮的下肢動脈形成術
病気
閉塞性動脈硬化症
治療法
局所麻酔で肘や足の付け根の血管から、カテーテルという細い管を使い、狭窄した血管をバルーン(風船)やステント(網状の筒)などで押し広げる治療法です。
標準的な治療スケジュール
2泊3日(1泊2日)で入院していただき、冠動脈を含めたカテーテル検査で精査を行います。
病変部位を把握したのち、治療方針を決定し、カテーテル治療になる場合、3泊4日(2泊3日)で再度入院していただき、治療を行います。
ペースメーカ留置術
病気
何らかの原因で心臓の拍動が止まったり著明に遅くなると、全身への血液の循環が不十分になって種々の障害が出たり、失神したり時に生命に危険が及びます。眼前暗黒感、めまい、ふらつき、動悸、息切れなどの症状もあります。
心臓には、収縮を命令する指令センター『洞結節』と、その指令を伝える『刺激伝導系』とがあり、洞結節からの指令は心房、心室の順に伝わり心臓が収縮します。
完全房室ブロック
洞結節からの命令を伝える刺激伝導系という導線が切れてしまった状態で、心室は心房とは別に勝手にゆっくりとしたリズムで収縮し、意識消失や突然死の危険があります。
洞不全症候群
洞結節の異常により起こります。収縮の指令の回数が40回/分以下と極端に少なくなったり、突然収縮の指令が出せなくなって5秒も6秒も停止し失神したりする病気です。
治療法
左または右胸の鎖骨の下付近から、注射する要領で電気を伝える細い導線(リード)を心臓まで挿入して、ペースメーカー本体と接続します。
本体は、直径4cm前後の大きさで重さ20g程度の円盤状の小さなもので、皮膚を5cm程度切開して、鎖骨の下の皮膚と筋肉の間に植え込みます。本体は精巧なコンピューター機能を備えた電池で、心臓の電気的活動を常に感知して、必要な場合に電気を発して心臓を刺激し、突然の心停止や著明な徐脈や頻脈に対応します。
標準的な治療スケジュール
術前にペースメーカーの必要性や植え込む機種の検討のために、心臓電気生理学的検査を行います。足の付け根から電極カテーテルという細い管を心臓に挿入して、心臓の中から詳しい心電図をとる1~1.5時間の検査で、2泊3日の入院が必要です。
ペースメーカー植え込み術は、手術室で局所麻酔で行う1~1.5時間程度の手術ですが、切開した皮膚の抜糸が終わるまでの通常7~10日間の入院です。植え込んだ腕の挙上は90°までに制限されますが早期退院は可能で、希望があれば外来で抜糸します。
外来で行う検査について
24時間心電図(ホルター)
24時間心電図を装着し、日記をつけていただきます。症状出現時には随時ボタンを押し、症状自覚時の心電図変化と照らし合わせ、病気の診断を行います。
朝、検査室に来ていただき装着し、その後は通常通りの生活をしていただき、翌朝回収します。(装着中、お風呂には入れません)
24時間心電図


運動負荷検査(トレッドミル)
運動負荷検査心電図を装着しランニングマシーンを歩いていただき、徐々にスピードや傾きを強くすることで、心臓に負担(負荷)をかけて検査をします。
運動負荷検査

心エコー

超音波を用いて体表から心臓の動きや大きさ、先天性異常、弁膜症などを評価します。
頸動脈エコー

超音波を用いて首の血管(頸動脈)の血流や動脈硬化の程度を評価します。
腎動脈エコー

超音波を用いて腎動脈の血流を評価します。血流が悪くなると、血圧上昇につながることがあります。。
血圧脈波検査(ABI, baPWV)
腕の血圧と足の血圧を比較します。閉塞性動脈硬化症の診断に有用であり、足の血流が低下するとABIの値も低下します。

心筋核医学検査

心臓に集積するラジオアイソトープ(放射線物質)を静脈注射し、安静時と負荷時(薬剤や運動で負荷をかけます)で比較を行い、心筋への血流の分布を評価します。
心筋梗塞、狭心症の診断に有用です。
心臓(冠動脈)CT

体に造影剤を注入し非侵襲的に冠動脈を撮影することで、急性心筋梗塞の原因となるプラーク検出や冠動脈内の動脈硬化の状態や狭窄を評価することができます。
造影剤を投与することにより冠動脈を描出します。
お薬で脈を遅くしながら撮影します。
当院外来でできる検査について
24時間心電図(ホルタ—)
24時間心電図を装着し、日記をつけていただきます。症状出現時には随時ボタンを押し、 症状自覚時の心電図変化と照らし合わせ、病気の診断を行います。 朝、検査室に来ていただき装着し、その後は通常通りの生活をしていただき、翌朝回収します。 (装着中、お風呂には入れません)
運動負荷検査(トレッドミル)
心電図を装着しランニングマシーンを歩いていただき、徐々にスピードや傾きを強くすることで、 心臓に負担(負荷)をかけて検査をします。
心エコー
心臓の動き、弁(フタ)の開き具合を評価します。
頸動脈エコー
首の血管(頸動脈)の血流や動脈硬化の程度を評価します。血流が悪くなると、失神を起こす ことがあります。
腎動脈エコー
腎動脈の血流を評価します。血流が悪くなると、血圧上昇につながることがあります。
ABI
腕の血圧と、足の血圧を比較します。足の血管が詰まってくると値が低下します。
心筋核医学検査
運動や薬剤で心臓に負担(負荷)をかけ、心臓の評価を行います。ラジオアイソトープ(放射性物質)を用いますので、検査に約3万円程度かかります。
心臓(冠動脈)CT
体に造影剤を注入し非侵襲的に冠動脈を撮影することで、動脈硬化の性状や狭窄を評価することができます。
胸痛精査のすすめ方
狭心症とは労作に伴い胸痛、胸部圧迫感を自覚する病気です。したがって、運動や薬で心臓に負担をかけて評価を行います。ただし、少しずつ症状が進行し、安静時でも胸痛が出現し始めた場合には、すぐに入院して詳しく調べる場合もあります。
まず、採血、レントゲン、心電図を行います。 次に、以下の3種類の検査で、さらに詳しく検査を行います。
- トレッドミル・・・心電図を装着し、ベルトコ ンベア上を走って、心電図変化、症状の有無を確認します。
- 心筋シンチ・・・心臓に集まる放射線物質(ラジオアイソトープ)を点滴し、運動時、安静時の集まりを評価します。運動時に染まらない部分は血のめぐりが悪い(狭心症)と判断します。
- 冠動脈CT・・・造影剤を用いたCTを撮影し、冠動脈の狭窄部位、閉塞部位を評価します。
上記の検査を行い、さらにカテーテルでの詳しい検査が必要となった場合は入院となります。
*患者さんの病状により検査内容が変わることがあります。
*専門用語に関してはインターネットなどで検索できるように省略していません。
カテーテル入院について
狭心症、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症など血管の状態を評価するために専用の血管造影室でカテーテル検査を行います。
まず手首、肘、鼠径部の動脈よりシースを留置し、血管との交通路を作り、そこからカテーテルを挿入して、目的の部分へ進め、造影剤を用いて撮影します。
検査の結果、狭窄部、閉塞部が見つかれば、治療を行います。
*患者さんの病状により検査内容が変わることがあります。
*専門用語に関してはインターネットなどで検索できるように省略していません。