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形成外科・小児形成外科

顔面神経麻痺後遺症の治療

顔面の筋肉(表情筋)の運動を支配している顔面神経に、何らかの原因で麻痺が起こると、おでこや眉毛、頬やくちびるなどの動きに障害がでます。麻痺側の眉毛の位置が下がり、上まぶたの皮膚が覆いかぶさることで視野が狭くなります。また、まぶたが閉じにくくなり、眼が乾燥したり炎症を起こすことがあります。麻痺側のくちびるがさがり、ほうれい線(鼻唇溝)が消失したり、食べ物や飲み物がこぼれでることがあります。

麻痺の原因としては、ベル麻痺やラムゼイハント症候群、外傷後、腫瘍切除後、うまれつきのものなどがあります。
最も頻度が高いベル麻痺やラムゼイハント症候群などの場合には、発症早期には耳鼻咽喉科で薬物療法などの保存的加療を行います。7割程度の方がかなりの程度まで回復しますが、完全には回復しない場合もあります。また、麻痺がある程度回復し動くようになっても、病的共同運動(口を動かす動作に連動してまぶたが閉じてしまったり、まぶたをとじたときに頬や口が勝手にひきつれた動きをする)や顔面のひきつれ(拘縮)といった症状を生じることがあります。

治療

上記のような症状に対し、顔面神経麻痺発症からの経過や患者さんそれぞれの状態に応じて治療を行います。

発症から比較的早期で表情筋の変性や萎縮が強くない新鮮症例では、神経縫合や神経移植術、交叉神経移植、神経移行術を行います。

発症から時間が経過しており筋肉の変性や萎縮を認める陳旧例では、変形を矯正するような静的再建術(眉毛のつり上げやまぶたの矯正、まぶたを閉じやすくする手術、口角のつり上げなど)や筋肉などの組織を移植し”笑い”の再建を行う動的再建術などを行います。

病的共同運動や拘縮に対しては、症状を軽減するためにボツリヌストキシンの注射、神経や筋肉の切除術、神経移植などを行っています。

経過や麻痺の状態に応じて適切な治療法を選択し、また、これらを組み合わせて治療を行うことが多いです。様々な病態や症状に対応する必要があるため、専門的な知識や技術を要します。

治療は、外来診療や日帰り手術で可能なものから入院加療が必要になるものまで様々です。