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形成外科・小児形成外科

リンパ浮腫外来

当院では原発性リンパ浮腫、続発性リンパ浮腫の治療に取り組んでいます。
予防のための生活指導、診断のための検査、治療(保存療法・手術治療)等について、医師、看護師、リンパ浮腫療法士がチームとなり対応しています。
リンパ浮腫はいったん発症すると完治することが難しいと言われており、日々の生活のなかで悪化しないように長く上手に付き合っていくことが重要です。そのためには医療者だけでなく、患者さんご自身の自己管理が非常に重要になります。

リンパ浮腫に対する複合的治療

1.リンパ浮腫について

リンパ浮腫とは、何らかの理由でリンパ液の流れが悪くなり、皮下にリンパ液が溜まりむくみが生じることです。

1)リンパ管の流れ

リンパ管は全身に張り巡らされており、静脈と協力して全身に送られた血液成分を心臓に戻す働きをしています。体の細胞で不要になったものやタンパク・脂肪などを運んでいるリンパ液は、リンパ管を通って首の下にある静脈角で静脈と合流します。手術やケガなどでこの流れが遮断されるとリンパの流れが滞り、細胞の隙間にリンパ液が溜まりリンパ浮腫という症状になります。

2)原発性リンパ浮腫と続発性リンパ浮腫

原発性リンパ浮腫はリンパ管やリンパ節などの先天的な発育不全などにより発症すると言われています。生まれた時から症状が出ている場合(早発性)と、35歳くらいまでは症状がなく、それ以降に浮腫が発症(遅発性)する場合があります。(Kinmonthの分類)

続発性リンパ浮腫は、乳がんや子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、大腸がんなどの外科治療で、がんが他の臓器に転移することを予防するために行うリンパ節郭清術後のリンパ管の閉塞、また放射線治療や抗がん剤治療の影響によりリンパ管の機能障害が起こるためと考えられています。発症時期は個人差があり、手術後数か月で発症する場合もあれば、数年~数十年経ってから発症することもあります。もちろん、生涯発症しない方もあります。

3) リンパ浮腫の病期分類

国際リンパ学会(International Society of Lymphology;ISL)分類を用います(表2)

0 期リンパ液輸送が障害されているが、浮腫が明らかでない潜在性または無症候性の病態。
Ⅰ期比較的蛋白成分が多い組織間液が貯留しているが、まだ初期であり、四肢を挙げることにより治まる。圧痕がみられることもある。
Ⅱ期四肢の挙上だけではほとんど組織の腫脹が改善しなくなり、圧痕がはっきりする。
Ⅱ期後期組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなる。
Ⅲ期圧痕がみられないリンパ液うっ滞性象皮病のほか、アカントーシス(表皮肥厚)、脂肪沈着などの皮膚変化がみられるようになる。
表2 病期分類(国際リンパ学会)

2.リンパ浮腫の治療

1)複合的治療(保存的治療)

標準的な複合的治療とは、スキンケア(清潔・保湿・保護)やセルフケア、日常的予防生活指導・弾性着衣・多層包帯法による圧迫療法・圧迫下の運動、用手的リンパドレナージが基本となります。

①スキンケアや予防指導、日常生活指導

スキンケアの目的は、皮膚(爪を含む)の清潔と保湿を維持し、健康な皮膚組織を保つことによって感染の危険性を減少させることです。特に発症後は患肢を清潔に保つとともに、保湿効果の高い皮膚軟化剤で十分な湿潤化を習慣化し、常に血行が良好な健全な状態を保つようにセルフケアや日々の予防的生活指導を行います。

②弾性着衣による圧迫療法

リンパ浮腫病期Ⅰ期や手足の形状の歪曲がないⅡ期は弾性着衣の適応で、弾性ストッキングや弾性スリーブなどを用いて、浮腫のある部位を圧迫します。また、正しく着脱できるように指導します。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス
③多層包帯による圧迫療法

手足の形状に歪曲がある、あるいは浮腫が著明で弾性着衣の装着が困難なリンパ浮腫病期Ⅱ期後期以降のリンパ浮腫の方に適応する圧迫療法です。専用の包帯を用いて圧迫をします。

④用手的リンパドレナージ(MLD)

細胞の隙間に過剰に滞っている組織液やリンパ液を専門的なドレナージ技術により、健康なリンパ管へ誘導してむくみを改善させることを目的に行います。

⑤圧迫下での運動療法

弾性包帯・弾性着衣により患肢を圧迫した状態で、筋ポンプ作用を活かして効果的に組織液やリンパ液を促す運動を行います。

2)外科的治療

①リンパ管静脈吻合術

がんの手術治療などで遮断されたリンパ管を静脈に繋ぐことで、リンパ液のうっ滞を解除します。局所麻酔で2cm程度の皮膚切開を行い顕微鏡下で行う低侵襲の手術です。

②血管柄付きリンパ節移植術

リンパ管静脈吻合術で、効果の出にくいケース(リンパ管の発達が元来未熟な場合など)に対しては正常に機能しているリンパ節をその栄養血管とともに採取して、浮腫を起こしている部位に移植します。移植した正常なリンパ節からリンパネットワークが再生することで、リンパ機能が回復することを意図した手術です。

3.リンパ浮腫診療の流れ

1)形成外科外来受診

  1. 形成外科外来は完全予約制のため予約をお取りください。
  2. 淀川キリスト教病院が初めての方は、他院で紹介状を作成してもらい、地域医療連携センターを経由して予約をお取りください。

2)形成外科診察

  1. 問診、視触診を行います。
  2. 細菌感染や炎症反応、緊急処置が必要な疾患によるリンパ浮腫であった場合、リンパドレナージや圧迫療法を行ってはいけないような疾患があるため、その確認のための検査を行います。

3)検査について

  1. 血液検査:炎症反応、栄養状態、肝臓・腎臓・電解質の状態 他
  2. 四肢の静脈エコー:深部静脈血栓の有無と静脈の流れについて確認します。
  3. 造影CT:血栓の有無を確認します。
  4. ICGリンパ管造影:インドシアニングリーン(ICG)という色素を皮膚の下に注入して、特殊なカメラで見ることでリンパ管の流れの状態を観察します。
  5. リンパ管シンチグラフィ:指の間に薬剤を注射しリンパ管に取り込まれることで、リンパ管の強さ、リンパ液がたくさん溜まっているところ、また深いところのリンパ管の状態などがわかります。(2018年から保険適応になりました)

01~05すべての検査を行うわけではありません。
※検査は受診当日にできるものとできないものがあります。
※浮腫がリンパ浮腫ではない、もしくは他に原因がある可能性のある場合、後日当該診療科を受診していただくことがあります。

4)リンパ浮腫の診断がついたら、病期に応じて複合的治療(保存療法)の計画を立て、リンパ浮腫看護外来を受診してしていただきます。

※当院のリンパ浮腫外来は自費診療です。

4.リンパ浮腫看護外来について

1)外来実施日

完全予約制  毎週月曜日(午後)、第2・4水曜日(午後)

2)対象者

当院通院中の方、他院からの紹介の方、いずれも医師の診断と指示があり、リンパ浮腫看護外来の説明を受け同意された方。

3)予約窓口

リンパ浮腫看護外来

4)担当者

今井 博美

日本医療リンパドレナージ協会認定 中級リンパ浮腫セラピスト
日本リンパ浮腫治療学会認定 リンパ浮腫療法士
日本静脈学会認定 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター
乳がん看護認定看護師

5)受診の際のお願い

  • 完全予約制のため、時間は厳守でご来院ください。
  • キャンセルされる場合は、必ず事前に「リンパ浮腫看護外来」にご連絡ください。
  • 予約の変更は、電話・もしくは「リンパ浮腫看護外来」で対応しています。

6)連絡先

淀川キリスト教病院代表
0120-364-489(固定電話から)
0570-003-489(携帯電話から)

10:00~16:00
「リンパ浮腫看護外来につないでください」とお伝えください。

7)内容と料金

※当院のリンパ浮腫の治療は、医療保険や介護保険の適応はありません。自費診療となります。また、保険診療上の決まりで、他の保険診療と同日の受診はできませんのでご了承ください。

複合的治療(保存療法)の内容

料金(税込)
上肢 下肢

相談・日常生活指導
スキンケアや予防指導、日常生活の留意点等について

45分 2,750円

弾性着衣による圧迫療法
弾性着衣の選定から圧迫療法、着脱指導等を行います。
※弾性ストッキングや弾性スリーブなどの材料代は別途かかります。
 (療養費補助が適応される場合があります)

60分 3,300円
バンテージ(多層包帯法)による圧迫療法
※多層包帯などの材料代は別途かかります。
 (療養費補助が適応される場合があります)
60分
3,300円
60分
4,400円
リンパドレナージ
皮膚の下に溜まったリンパ液を、正常に機能しているリンパ管に流します。
60分
4,400円
60分
5,500円
リンパドレナージ+バンテージ(多層包帯法)
圧迫療法の効果をより高めるために、リンパトレナージと多層包帯法を合わせて行います。
90分
6,600円
90分
7,700円
セルフリンパドレナージ
ご自身でリンパドレナージができるように指導します。
45分 2,750円