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形成外科・小児形成外科

口唇口蓋裂の治療

口唇口蓋裂とは?

​先天的にくちびるや顎の癒合がうまくいかず、裂隙を生じている状態です。癒合不全の程度によって、口唇裂、口蓋裂単独のものから、くちびるから口の中まですべて割れているようなケースもあります。

治療の時期について

生後3か月でくちびるを閉じる手術、1歳~1歳2か月で口の中(口蓋)を閉じる手術を行います。言葉が出てくるのを待って、小学校入学までに正常な言語を獲得することを目標に、4歳~6歳の間に集中的に言語訓練を行います。乳歯から永久歯に生え変わる時期(7歳~10歳)に、顎の割れているところに骨移植を行って、歯並びをよくするための準備を行います。治療の仕上げとして、思春期以降に、残存する変形に対してあごの手術(顎矯正手術)や鼻形成術を行って、治療終了となります。

口唇口蓋裂の治療は見た目も重要ですが、おしゃべりをするのに必要な口蓋の機能再建も重要です。治療は形成外科、矯正歯科、言語治療の3科によるチーム医療を行い、質の高い治療を提供しております。矯正歯科は院外の口唇口蓋裂を専門とする歯科医師と連携をとり、治療を行っています。

治療の時期について

片側口唇裂に対する口唇形成術

生後3か月程度、体重が5キログラムを超えた時期にくちびるを閉じる手術を行います。

適切に組織を扱えば、傷跡はほとんど目立ちません。

当科では口唇裂の手術を2泊3日の短期入院で行っています。手術が終了して、3時間後からミルクを飲むことができます。術翌日に経過が良好であることを確認して、退院となります。表面は医療用のボンドでくっつけますので、抜糸はありません。

片側口唇裂に対する口唇形成術

図:(左)手術前 (中央)手術のデザイン (右)手術終了時

両側口唇裂に対する口唇形成術

当科では原則として一回の手術で裂の閉鎖を行います。裂の幅が非常に広い特殊な症例では口唇癒合術(lip adhesion)を行ってから、口唇形成術を行います。

両側口唇裂に対する口唇形成術

図:(左)手術前 (中央)手術のデザイン (右)手術終了時

口蓋形成術

1才~1才2か月で口蓋の裂の閉鎖を行います。粘骨膜弁法(two-flap法)で閉鎖しますが、裂幅の狭い場合や、軟口蓋のみの裂の場合は口蓋をジグザグに縫い合わせるintervelar veloplasty法を用いることもあります。通常、術後1週間くらいで退院となります。

口蓋形成術

図:(左)手術前 (中央)デザイン(Two flap palate plasty)(右)手術終了時

顎裂に対する骨移植術

腸骨(腰の骨)または脛骨(足の骨)から骨を採取して、顎裂に移植します。術後3~5日で退院となります。 術後は歯科矯正治療が上下の調和のとれた咬合が完成するまで続きます。

成人時期まで残った変形に対する治療について

反対咬合に対する顎矯正手術(two jaw surgery)

口蓋裂は幼少時に口蓋に対する手術を行うので、上あごの発育が悪く、反対咬合(受け口)になりやすくなります。上あごが引っ込んだ顔貌は唇裂特有の顔貌として認識されることがあり、顔面全体のプロポーションを整えて、調和のとれた側貌を得る目的で上あごと下あごの骨切り移動を行います。手術により、顔貌は改善し、咬合も安定します。

​鼻変形に対する修正術

口蓋裂の治療の最後の仕上げとして、鼻の形成術を行うことが非常に多くなってきております。他院で過去に最終手術を受けたあとの再修正を希望して、当科を受診される患者さんも多くおられます。

唇裂術後の鼻変形は、下記のようなものがあります。

  1. 鼻孔の左右非対称
  2. 斜鼻変形
  3. 鼻背、鼻尖の変形
  4. 鼻幅の開大
鼻変形に対する修正術

これらの変形に対して2泊3日の入院手術で修正術を行います。肋軟骨や耳介軟骨を用いて鼻尖形成や、隆鼻術を行います。斜鼻変形に対しては鼻骨骨切り術を、鼻幅の縮小は鼻翼切除を行います。