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呼吸器内科

病気・検査・治療

呼吸器系の病気では、全く無症状で検診にて発見されることもしばしばありますが、症状が出る場合には、咳、痰(血痰)、発熱、息切れ、胸痛が見られることがあります。

具体的な疾患としては、呼吸器系に起こる腫瘍(原発性肺癌、縦隔や胸膜の腫瘍)、感染症(肺炎、肺化膿症、気管支拡張症、気管支炎、結核など)、免疫・アレルギー疾患(気管支喘息、間質性肺炎/肺線維症、過敏性肺炎、サルコイドーシス等)、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫/慢性気管支炎)やこれらに伴う呼吸不全、胸膜疾患(胸膜炎、気胸)、睡眠時無呼吸症候群などを治療しています。
年度ごとの入院患者数については診療実績のページをご覧ください。

呼吸器系疾患

肺がん

近年、肺がんは我が国のがんの死亡原因の中でトップの疾患です。タバコとの関連がよく言われていますが、喫煙しない人にも肺がんは発生します。年齢が上がるに従って肺がんの発生頻度は増え、高齢者に多い病気です。
肺がんは、咳、痰、血痰、息切れ、胸痛などの症状が出て医療機関を受診し診断がつく場合もありますが、多くは無症状のため他疾患診療中や検診で発見されます。肺がんが疑われる場合には、病巣の一部をとって細胞を調べる必要があり、一番よく行われる検査は気管支内視鏡検査です。当科の気管支鏡検査では、必要により超音波やCTを検査に併用しています。時には痰や胸水の細胞やリンパ節などの組織を採取して診断がつく場合などもあります。診断後は、病気の広がりや全身状態を評価して、最適な治療を判断します。

肺がんの治療は、病気の広がり、全身状態(年齢、心肺機能、合併症など)を考慮して手術・放射線治療・薬物療法の3つを単独、あるいは併用して行います。手術では呼吸器外科と 綿密に連携しており、必要によって当科で術前あるいは術後化学療法を行っています。薬物療法には従来の抗がん剤のほか、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤も積極的に使用しています。これらの薬剤は、特定の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転座、ROS1融合遺伝子)の有無やPDL1の発現によってその適応を決めています。
肺がんは、その組織の種類によっても治療の方針が少しずつ変わることがあり、当院では、日本肺癌学会のガイドラインに基づいた最新の治療をお勧めしています。初回の化学療法は、入院して行うことが多いですが、外来点滴継続可能な方は、外来化学療法センターにおいて行っています。症状がある場合には、咳止め、鎮痛剤(痛み止め)、酸素療法なども併用します。肺がんでは必ずしも痛みを伴うとは限りませんが、必要な場合は緩和医療内科などにも相談して症状の改善を図ります。

何よりも肺がんは症状のないうちに検診などで早期発見をすることが重要です。当院の健康管理増進センターでは肺がんの早期発見をめざしてヘリカルCT検診も行っていますのでご利用ください。

肺炎・急性気管支炎

呼吸器系は常に直接、外界と接し、最も病原体が侵入しやすい場所です。肺炎や急性気管支炎は、病原体(細菌、マイコプラズマ、ウイルスなど)が、肺や気管支で炎症を引き起こす疾患です。

日本人の3大死因は長年、1位がん、2位心疾患、3位脳血管疾患でしたが、2011年の人口動態統計では肺炎が3位になりました。その理由は、脳血管疾患や加齢により嚥下能力衰えて、誤嚥性肺炎を起こしやすい高齢者が激増しているためと思われます。当科では、誤嚥性肺炎の入院例に対しては、抗生剤投与とともに口腔ケア、嚥下リハビリテーションなどを行って治療をしています。一方で、通常の肺炎に対しては原因となる病原体の検索を迅速検査や培養検査、血清検査によって積極的に行いつつ、主に外来で抗生剤による治療を行っています。

気管支喘息・咳喘息

気管支喘息(以下喘息)とは、呼吸をするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」などの音がしたり、発作的に咳込んで、呼吸が苦しくなるような病気です。これらの症状は一日のうちでもが見られ、寒暖の差や運動によっても誘発されます。喘息と聞くと子供の病気と思われがちですが、成人以後、特に中高年になって発症する 方が非常に多くおられます。このような喘息の患者さんでは、慢性の気道炎症が存在し、むくみや分泌(喀痰)の増加、気道の筋肉の収縮によって気道が狭く なっています。治療されずに放置すると重症化、難治化して、時に命にかかわります。

当科では最新の喘息治療のガイドラインに沿った治療を行います。具体的には、喘息の発作時の治療は気管支を広げる薬(気管支拡張剤)や炎症を抑える薬(抗炎症薬)によって治療し、発作のない時も炎症の原因となるアレルゲン(ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットのフケなど)や増悪要因を避け、抗炎症薬等によって発作をおこさないようコントロールしていきます。また、半数以上の方に、鼻のアレルギーもみられるため、その治療も合わせて行います。なお咳喘息とは、長引く咳のみを症状とし、通常の咳止めでは改善しない喘息の前駆段階の疾患です。最近非常に増えている疾患です。通常の喘息と同様な治療を行います。なお、発作時には救急や外来で適宜治療できるよう体制を整えておりますので、病状が安定した後はかかりつけ医での継続治療をお願いしております。

慢性閉塞性肺疾患COPD(肺気腫、慢性気管支炎)・呼吸不全

慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)とは、これまで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気を総称した名前です。この病気は、主に喫煙などの有害物質によって末梢の気道や肺胞が障害されて引き起こされます。主な症状は、咳や痰が続いたり、労作時に息切れを感じたりすることです。進行すると呼吸不全(肺から十分な酸素が取り込めなくなること)や心不全を起こし、生命に関わる病気です。初期には、これらの症状は年齢のためと思われて見過ごされがちですが、早期に確実に禁煙し、薬物治療をすることで進行を抑えることが可能な疾患であることから、肺機能検査による早期発見が重要です。

COPDに対する基本治療薬は気管支拡張剤です。これまでこの疾患の薬は多くはありませんでしたが、最近は新しい薬が数多く開発されてきています。当科では、これらの薬物療法や禁煙指導、呼吸器リハビリテーション、在宅酸素療法、在宅鼻マスク人工呼吸法などを行いて最新の治療を行っています。
この病気は経過中に呼吸器感染症や何らかの刺激により“急性増悪”という呼吸状態の悪化が起こることが知られており、状況によっては人工呼吸器による治療が必要になります。当科では急性増悪においては積極的に非侵襲的人工呼吸療法 (NPPV)を用いて治療を行い、必要により集中治療室において挿管下人工呼吸を行っています。また、この病気は肺だけでなく心血管疾患、骨粗鬆症、糖尿病などを併発しやすいことが知られており、総合的な診療も必要なため、かかりつけ医との連携を重視しています。

気胸

肺は元々は、空気を含んだスポンジのような臓器であり、その表面は胸膜という膜で包まれています。この表面に傷がつくと気胸という肺のパンクが起こります。多くはこの胸膜面にできた肺のう胞という空気の袋や肺気腫などによって胸膜が弱くなった部分が破れるために起こります。時に女性の場合には月経などに伴って気胸が起こることがあります。
気胸は非常に再発しやすく、またしばしば反対の側の肺にも起こることがあるので注意が必要です。当科では内科的治療を行いつつ、必要な患者さんには迅速に呼吸器外科へ紹介して胸腔鏡下手術を行っています。

間質性肺炎・肺線維症

肺は肺胞という薄い壁を通して酸素を血液に取り込み、血液から二酸化炭素を吐き出す働きをもっています。間質性肺炎はさまざまな原因からこの壁に炎症をおこし、壁が厚く硬くなり(線維化)、ガス交換が障害される病気です。その原因には、関節リウマチなどの膠原病(自己免疫疾患)、職業や生活上での粉塵やカビ・ペットの毛・羽毛などの吸入、薬剤、サプリメントなどの健康食品、特殊な感染症などがあり、原因を特定できないものは特発性間質性肺炎と呼んでいます。間質性肺炎や肺線維症では、空咳が出たり、労作時に息切れが出ることがあり、進行すると酸素が十分取り込めなくなる病態(呼吸不全)が起こります。 診断は、まずは胸部レントゲン写真やCT、肺機能検査や採血が中心になります。病因の検索や治療法の選択のため、気管支鏡検査(気管支肺生検、気管支肺胞洗浄)が行われ、時に呼吸器外科と連携し、胸腔鏡下肺生検を行っています。

本疾患の治療はその原因や病態によって異なります。当科では臨床情報や画像検査、病理検査を総合的に検討し、原因が明らかな場合にはその除去や治療に努め、必要な患者さんにはステロイド治療や免疫抑制薬、抗線維化薬、酸素療法を行っています。特に膠原病が原因の場合にはリウマチ膠原病内科と連携し、専門的治療を行っています。

サルコイドーシス

サルコイドーシスは複数の臓器(リンパ節、肺、眼、皮膚、唾液腺、心臓、神経、筋肉など)に病巣(肉芽腫)ができる疾患です。現在本症は、体の持つ異常な免疫反応と推定されていますが、その原因は不明です。罹患する臓器により症状は異なりますが、病変の拡大が認められる前は多くは無症状であり、検診で発見されることもしばしばです。目に病巣がでると目のかすみ、視力低下、肺の病変が進行すると咳や息切れ、皮膚では発疹、心臓では不整脈などが出現します。経過として自然軽快することも多いですが、改善せず慢性化したり、進行したりする例があります。病巣部位や症状、進行から副腎皮質ホルモン剤を使用して治療をする場合があります。

睡眠時無呼吸症候群

夜間睡眠中に呼吸が止まることを家族や同僚から指摘された方、いびきが強い人、寝ても十分疲れがとれず、昼間の眠気が強い方は、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。睡眠時無呼吸症候群は、仕事や学業成績の低下、種々の合併症(高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中など)の悪化、交通事故などに関係することが知られています。当科では睡眠時無呼吸の診断には、外来で行う簡易のポリソムノグラフィーと入院で行う脳波を含めたポリソムノグラフィーがあります。入院の場合、1泊2日の検査入院となります。治療としてはマスクで陽圧をかけるCPAP療法、必要により歯科医と連携して口腔内装具を作成して治療を行っています。

診療実績