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親ががんの子どもたち(中・高校生向け)

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親ががんの子どもたち(中・高校生向け)

お父さんかお母さんが、がんになったとき、子どもたちに知っておいてほしいこと

日本人は生まれてから死ぬまでに、2人に1人が何らかの“がん”にかかると言われており、私たちにとって身近な病気です。“がん”という言葉を聞いたことがあっても、どのような病気なのか、どのような治療をするのか、あなたや家族の生活がどう変わるかなど、分からないことがたくさんあるでしょう。このページでは、がんのことを正しく知ることで、あなたの疑問や不安を減らすことができればと願っています。

あなたの親ががんになったと知ったとき

“がん”という言葉を聞いて、とても驚かれたことでしょう。

そして、次のようなことを考えたり、感じたりしたかもしれません。

  • 親の体調や今後の治療について心配になる。
  • “がん”と聞いて、親が死ぬかもしれないと不安になる。
  • どうして自分の親ががんになったのか、自分のせいではないか、と自分を責める。
  • がんが私にうつるのではないか、将来私もがんになるかもしれない、と心配になる。
  • 家のことは(食事・洗濯・掃除など)誰がしてくれるのか心配になる。
  • 自分は学校に通うことができるのか、進学できるのか、友人と遊びに行ってもいいのかなど、自分の生活がこれからどうなるのか不安になる。
  • 親に気をつかって、無理に明るく振る舞ってしまう。
  • 親とどのように接してよいか分からない。

誰のせいでもありません

このようなことは、あなただけでなく誰もが考える当たり前のことです。あなたの親ががんにかかったのは、誰のせいでもありません。例えば、自分が親に迷惑をかけたからとか、自分のことがストレスだったからといって、親ががんになったわけではないのです。

また、親の体調を心配しながら、あなた自身の生活や将来が気にかかることも自然な気持ちです。

また、あなた自身の体や心に変化があるかもしれません。

  • 食欲がなくなる
  • 夜眠れない、寝つきが悪い、眠りが浅いなど
  • 物事に集中ができない、ボーっとしている時間が長いなど
  • ささいな事でイライラする、すぐに怒る、物に当たるなど
  • 急に涙がでてくる、孤独な気持ちが強いなど

周りの人に相談しましょう

あなたの話を聞いて力になってくれる人がいる

気持ちや体がつらい時は、周りの人に相談しましょう。両親、親戚、身近な大人、学校の先生、保健室の先生、親が通院している医師、看護師など、あなたの話を聞いてくれる人はたくさんいます。周りの大人に相談することは、決して恥ずかしいことではありません。また、他人に相談する人は、弱い人間であるわけでもありません。きっと、あなたの話を聞いて力になってくれるでしょう。

がんについて学ぶ

がんとは、どんな病気でしょうか

図1.がんの発生と移転

人間の体は細胞からできています。

その正常な細胞の遺伝子に傷がついてできる異常な細胞(がん細胞)が無限に大きくなって、かたまりになったものを「がん」といいます。普通は、自分の体の免疫が働いて、がん細胞を死滅させますが、その効果が得られず、どんどん大きくなり続け、周囲の血管やリンパ管に入り込み、他の体の部分(内臓や骨など)に移動してその場所でも増えていきます(転移)(図1)。


がんという病気自体が、人から人へ感染することはありません。つまり、あなたの親のがんがあなたに直接うつることはありません。

がんの種類

がんは、すべての臓器にできる可能性があり、一般的にはその発生した部位などから、「胃がん」「肺がん」「乳がん」などの名称が決められます。また、「がん」という名称は用いられていませんが、白血病やリンパ腫なども、がんの一種です。がんは、その種類や状態によって、治りやすかったり治療が難しかったり、あるいは発見しづらかったり、それぞれ特徴があります。
詳しくは、国立がん研究センターがん情報サービスのホームページ「それぞれのがんの解説」を参考にしてください。

がんの治療

図2.がんの治療の3つの柱

がん治療の三つの柱として、手術療法、放射線療法、薬物療法(抗がん剤など)が挙げられます。

がんの種類と進行度などを踏まえて、これらを単独あるいは組み合わせて行うこと(集学的治療)が、勧められています(図.2)。


また、がんそのものに対する治療に加えて、がんにともなう体と心のつらさを和らげる緩和ケアも同時に行います。

手術療法とは

がんを手術で切除します。切除する範囲を小さくしたり、手術方法を工夫したりすることによって患者さんの体への負担を減らし、手術後の体の回復が早くなることがあります。
がんの種類によって、入院期間はさまざまですが、以前に比べて短期間の傾向(およそ1、2週間)にあります。ただし、退院後もしばらくは自宅での療養が必要となります。

放射線療法とは

放射線をがんに照射することによって、がん細胞が増えることを抑えます。放射線療法の利点は、手術療法のように体を傷付けることなく、がんを小さくする効果を期待できることですが、がんの種類によって放射線療法の効きやすさや治りやすさは大きく異なります。 主な副作用も照射部位によって違います(照射部位の日焼け、疲れやすい、食欲がなくなるなど)。

薬物療法(抗がん剤など)とは

以前は、抗がん剤を使用する治療として「化学療法」と言われていましたが、医療の進歩で抗がん剤だけでなく、抗がん剤以外の薬の種類も増えてきたので、総称して「薬物療法」とも言うようになりました。薬物療法は、通院しながら注射や点滴、飲み薬で治療をすることができます。

化学療法

  • 抗がん剤の薬を使用して、がん細胞を死滅させますが、正常な細胞にも影響します。主な副作用は、吐き気、食欲低下、体のだるさ、手足のしびれ、体の抵抗力が落ちる(発熱、風邪を引きやすい)脱毛 など
  • 分子標的薬という、がん細胞が増殖する原因となる分子の働きを妨げる薬剤もあります。主な副作用は、皮膚の湿疹、下痢、歩く時に息切れがする、血圧が高くなる、傷が治りにくい など

ホルモン療法

女性ホルモンと男性ホルモンの影響で増殖するがん(乳がん・卵巣がん・子宮がん・前立腺がん)に対して、ホルモンの分泌を抑えてがんを縮小させていきます。
主な副作用は、ほてり、めまい、骨がもろくなる、血管が詰まりやすくなる など

免疫療法

血液の中にある免疫細胞は、外部から侵入した異物やがん細胞を攻撃する役割を果たしています。一方、免疫が過剰に働くと正常な細胞も攻撃してしまうため、ブレーキをかけて免疫を調整する機能もあります。がん細胞は、この機能を利用し、免疫にブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃避することで、どんどん増殖することが分かってきました。そこで、薬によってこのブレーキを解除して本来の免疫細胞による攻撃を取り戻すことで、がん細胞を縮小させていきます。


主な副作用は、体のだるさ、疲れやすい、歩行時に息切れがする、腹痛を伴う下痢、のどが渇く、尿が多くなる、むくみが強い など

※インターネットで「免疫療法」と検索すると、効果が正確に証明されていない治療方法もでてきますので、間違えないようにしましょう。

緩和ケアとは

緩和ケアとは、「病気に伴う心と体の痛みを和らげるケア」のことをいいます。治療を続けていく中で、がん自体や薬の副作用による体の苦痛、心のつらさやストレスを和らげる方法を、主治医、看護師、薬剤師などがチームを組んでケアしていきます。また、緩和ケアは、がんが進行した時期から始まるのではなく、がんと診断された時から始まっています。

あなたが親にできること

がんになった親には、今まで通りに家事ができないこと、あなたのお世話ができないことで罪悪感という感情が起こる、と言われています。

また一方で、あなたには今まで通りの生活を送って欲しいと願っていることでしょう。無理にあなたの生活を変える必要はありませんが、がんになった親のことが気になる、どのように話していいか分からないと思ったとき、以下のように接してみてはいかがでしょうか。

  • 親と一緒に過ごす時間をつくってみましょう(無理に会話しなくてもよいと思います)。
  • 親が休んでいる時は、そっとして休ませてあげましょう。
  • 「○○しようか」「大丈夫?」「いつでも手伝うから、言ってね」など、手伝う準備ができていると日頃から声をかけてみましょう。
  • 家のお手伝いや自分でできることは自分でしましょう(自分の部屋の掃除、自分の洗濯物をたたむ、ゴミ捨てなど)。

親ががんになることは、家族にとっても大きなできごとです。しかし、親ががんという病気になったからこそ、家族で協力し支え合うことが大切です。そのために、あなたの正直な気持ちや悩みごとを、親に伝えてみてください。親も、あなたの気持ちを知りたいと思っています。

がんに関する情報サイト

インターネットで、がんについて検索するとさまざまな情報が出てきます。時には、ブログで個人の感想や状況が掲載されていたり、誇大広告のような情報もあります。そのような情報ではなく、正しい情報を得られるサイトをご紹介しますので、参考にしてください。

がんに関わる医療者からのメッセージ

家族のかたちはいろいろありますから、今まで述べてきた内容が、全てあなたに当てはまるとは限りません。

しかし、あなたがひとりで悩んでいるのであれば、ぜひご両親や周囲の大人に相談してみてください。また、親と一緒に病院に行ってみてください。私たち専門家は、あなたの親はもちろんのこと、あなたを含めた家族のサポートをしていきます。

<参考文献>
1.国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」
2.National Institutes of Health:When Your Parent Has Cancer A Guide for Teens,2012,USA
3.文部科学省:がん教育推進のための教材,2016