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#がん#診療科連携

治療効果だけでなく、生活にも配慮した”がん薬物療法”

抗がん剤という言葉は知っていても、実際どのような治療を行っているのか、イメージしにくい方も多いのではないでしょうか。今回は腫瘍内科の取り組みついて、重岡靖主任部長にお話をうかがいました。

多様な抗がん剤とその特性

重岡 靖 腫瘍内科 主任部長

こ腫瘍内科は、がんに対する薬物療法を専門的に行う診療科です。いわゆる抗がん剤による治療ということになりますが、現在は様々な種類の薬剤があります。昔ながらの一般的にイメージされる抗がん剤は細胞障害性抗がん剤と呼ばれ、がん細胞を攻撃する薬です。現在も治療の中心として使われています。2000年前後から登場した分子標的薬は、がんが増殖する仕組みに関わる分子(タンパク質など)に作用する薬です。細胞障害性抗がん剤が骨髄など正常な組織にも作用しやすいのに対し、分子標的薬では個々の薬剤で違いはありますが、がんの増殖を防ぐことが主体です。細胞障害性抗がん剤の副作用を和らげる治療が発達してきましたし、副作用が比較的少ない分子標的薬も登場してきたことで、辛い思いをする治療という以前のイメージとは変わってきたと思います。前立腺がんや乳がんなど、ホルモンを利用して増殖するがんに対しては、ホルモンの分泌や働きを抑える内分泌療法薬を用いることもあります。  抗がん剤による治療は、内服、点滴、皮下注射などで行います。内服は患者さんのご自宅で、注射・点滴は病院で行います。普段通りの生活を行いながら治療できるのが最善であるため、なるべく入院せず、通院で治療できるように工夫しています。外科で中心静脈ポートを埋め込んでもらい、インフューザーポンプという器具を使って自宅で3日間の点滴治療を行う場合もあります。

がん治療の舵取り役を担う

これらの薬は、がん治療の様々なタイミングで用いられます。手術前後の薬物療法で完治の可能性を高められることも多いです。また、乳房温存率を上げるために乳がんの術前薬物療法を行うことも一般的になっています。完治が望めない状況であっても、痛みなどの、がんによる辛い症状を抑える薬を一緒に使いながら、抗がん剤による治療を続けていきます。がんが小さくなれば体調が改善することが多く、抗がん剤により生活の質が高まることも多いのです。このように、がんとうまく付き合うための治療も行っています。

患者さんの状態を常に把握しながら、その時々で必要な治療を提案するのが私たちの役割です。薬だけで、がんによる痛みが取り除けない時には、痛みのある部位に放射線治療を行ったり、ペインクリニックの外来で処置したりすることもあります。がんの治療には、多くの診療科が関わります。必要な時に必要な診療科の力を借りて治療を受けていただく、その舵取りを腫瘍内科や外来化学療法センターのスタッフが行っています。

チームで支える

手術でがんが取りきれた場合でも、薬物治療を行う期間が数年にわたることもあります。完治が見込めない場合は、さらに長期間になることが考えられます。そこで重要になるのが、薬の効果と身体の負担のバランスです。身体の負担が大きくて今まで通りの生活ができないのであれば、あまり強く治療をお勧めしない方が良い時もあります。主役は患者さんですから、ご本人と相談しながら負担がかかり過ぎないように注意しつつ、どこまで治療を続けるか決めていきます。その時に医師と患者さん二人だけでなく、家族や親しい人がいらっしゃれば同席してもらい、一緒に話し合うことが望ましいと考えています。患者さんは日常生活を犠牲にしてでも頑張ってしまいがちで、診察室では気後れして、「治療が辛い」と言えないこともあります。実際、診察室でお子さんが「そこまで無理しなくていいんじゃないの?」と意見して、患者さん自身がハッと気づくような場面も見受けられます。 患者さんが適切な治療を受け、希望を持ちつつ出来るだけ楽に生活が送れるよう、医師、看護師、薬剤師など多職種からなるチームと、可能であればご家族など親しい方のご協力のもとで、支援していきたいと考えています。在宅で療養中の患者さんに関しては、かかりつけ医や訪問看護ステーションと情報を共有しつつ連携していきます。淀川キリスト教病院では、患者さんと向き合いながら、周囲を取り巻く環境も含めた、視野の広い医療を提供することを心がけています。

受診の際のご注意

当院を受診の際は、かかりつけ医を通じて当院「地域医療連携センター」でご予約をお取りください。

取材日:2022年5月17日

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