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診療科や職種の垣根を超えて連携し治療から退院まで支えるチーム医療

新型コロナウイルス感染症の流行が今なお続いていますが、呼吸器内科では当然、そのほかにもさまざまな疾患を診療しています。肺炎や結核といった感染症、主にたばこが原因となる慢性閉塞性肺疾患、そして肺がんなど、あらゆる呼吸器内科疾患に対応する呼吸器内科についてお話しを聞きました。

肺がん治療は各診療科と連携

紙森 当院の呼吸器内科では、肺がんも含め呼吸器疾患全般の診療にあたっています。特に肺がんに関しては、先進的な病院ほど検査は呼吸器内科、治療は腫瘍内科などと役割分担が進んでいますが、当院では検査、診断とがんの告知から治療まで、呼吸器内科が一貫して携わる点が特長と言えるでしょう。告知後から治療方針を決定するまでは時間をかけられないので、そういった状況の中で複数の診療科をまわることなく、私たちが一貫してお話しを聴き、患者さんと関係性を築きながら今後の方針を共に決められるのは、患者さんにとってもいいことだと思います。

呼吸器内科 紙森隆雄主任部長

大谷 もちろん呼吸器内科だけで治療は完結できないので他科との連携が必須ですが、当院は各診療科の垣根が低いのも特長のひとつです。例えばオプジーボなどで知られる免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療では、内分泌障害の副作用が起こることがあります。その対応のための的確な検査や治療を行う際、各分野の診療科と迅速に連携できるのは大きなメリットですね。

呼吸器内科 大谷賢一郎部長

西島 肺がんの治療を進めるなかで、症状が強くなって痛みや息苦しさを伴うこともありますが、当院は日本におけるホスピスの先駆けであり、緩和医療についても経験値の高い病院です。治療をしながらいかに日常のQOL(生活の質)を保つことができるかを大切にし、緩和医療内科などと共にカンファレンスしながらよりよい治療をめざしています。また骨転移で歩くのがつらいといった場合はリハビリテーション科とも相談し、退院後の生活まで見越したケアをチーム医療の中で考えていく体制ができています。

吉井 診断から治療にかけては呼吸器外科や腫瘍内科を含めたカンファレンスを行っています。今や肺がん治療も多様化していきているので、患者さんそれぞれの病態や状況に応じた治療を導き出すために、多くの専門家を交えて相談できるのは非常に心強い体制だと思います。また医師だけでなく看護師も患者さんを支えるうえで大きな役割を果たしています。告知の場での精神的なケア、治療や病状に対する不安、治療後の心配など、医師だけではどうしてもサポートしきれない部分をがん認定看護師が寄り添ってくれますし、病棟の看護師もがん患者さんのケアに慣れているので、入院中のことだけに限らず、在宅治療に移るにあたって必要な準備など、細かくアドバイスしてくれています。

大谷 検査に関して、今年中にはクライオバイオプシーという新しい肺がん検査法を導入できるよう準備を進めています。従来と同じく気管支内視鏡を用いた検査ですが、ただ鉗子で摘んで組織を採取するのではなく、凍らせてから採取するという方法で、こちらの方がより多くの組織をきれいな状態で採取できるため、診断の精度が向上するとされています。

夜間も呼吸器疾患の救急対応

西島 当院は呼吸器疾患の救急を24時間体制で受け入れており、いわゆる急性呼吸不全などに対し救急科と連携して治療にあたっています。ここ数年では新型コロナウイルス感染症が原因の重症呼吸不全に対する人工呼吸や対外式膜型人工肺(ECMO)にも対応しており、高次医療機関に転院することなく当院で診療が可能です。新型コロナウイルス感染症に限らず、間質性肺炎の急性増悪や一般的な重症肺炎の呼吸不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、ぜんそくなども含め、重症の症例であっても遅滞なく診療できる体制となっています。

呼吸器内科 西島正剛部長

紙森 気胸に関しても内科的治療のほか、必要な場合は呼吸器外科による手術に対応しています。

大谷 気道出血、いわゆる喀血に対応できる病院は少ないかもしれません。止血剤や抗菌薬を用いた内科的治療では対処できない場合、カテーテルによる治療が行われますが、夜間対応までできる病院はそう多くないので、他院に運ばれた患者さんが当院に搬送されてくるということもあります。

西島 大阪市の淀川以北は以南に比べて病院が少なく、摂津、吹田、豊中などからも患者さんが搬送されてきます。そういった状況の中でも、迅速に対応できる体制を整えています。

不安のない退院に向け多職種が連携

大谷 COPDの治療に用いる吸入薬は患者さんご自身に扱っていただくため、手技的な問題をクリアしないと処方できませんが、当院では慢性呼吸器疾患の認定看護師が在籍しているので、しっかり時間をとって吸入薬の指導を行えます。また、ぜんそくの患者さんには生物学的製剤の自己注射を指導し、通院回数を減らすことで負担を軽減できるよう取り組んでいます。

呼吸器内科 吉井直子医長

吉井 新型コロナウイルス感染症はもちろん、結核やその他の呼吸器感染症患者さんの受け入れもしています。他者に感染させる可能性のある排菌患者さんは結核専門病院にお送りしますが、この地域は比較的結核が多いということもあり、治療に習熟していると言えます。

一般的な細菌性肺炎や特殊なレジオネラ肺炎、最近増えている非結核性抗酸菌症といった感染症の患者さんも多く通院されており、当院で診断・治療を行っています。

紙森 高齢者の誤嚥性肺炎に対しては、急性期病院である性質上どうしても長期入院で治療を続けることは難しいのですが、嚥下機能のリハビリなども含めた適切な治療の後に回復期病院等へお送りしつつ、それらの施設とも連携をとりながら経過を診るかたちをとっています。当院では毎週、医師や地域連携担当看護師、メディカルソーシャルワーカーなどがカンファレンスを行い、全入院患者さんの治療や退院に向けての話し合いをしています。独居で身寄りがなく退院後の生活に不安があるなどさまざまな問題に対し、医師だけでなく各職種が連携して答えを出し、可能な限り安心して退院できるよう最善を尽くしています。

受診の際のご注意

当院を受診の際は、かかりつけ医を通じて当院「地域医療連携センター」でご予約をお取りください。

取材日:2023年12月

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