眼科は全身疾患の“窓” 他科と連携し、専門性の高い診療を
白内障、緑内障、加齢黄斑変性といった高齢者にお悩みの方が多い疾患から、ぶどう膜炎疾患、斜視弱視、網膜硝子体手術など専門性を要する治療まで幅広く診療している眼科。医師それぞれの専門領域を交えながら、診療内容について聞きました。
常勤・非常勤の多数の医師が在籍
中井 当院の眼科は今年(2025年)4月に雲井美帆医師が着任し、現在は常勤医4名の体制となりました。雲井美帆医師は、網膜硝子体の疾患が専門で、さらにバックグラウンドには緑内障診療を経験しているのも特長です。今後は当院でも手術も含めて、緑内障治療ができるようになればと考えています。また雲井弥生医師は、斜視弱視治療を専門としています。常勤医の岩本医師と上江田医師は若く、優秀な医師です。彼らに多くの症例を経験してもらいたいですし、また私たちも彼らから剌激を受けながら日々の診療に携わっています。

各専門領域において質の高い医療を
中井 私の専門はぶどう膜炎疾患という、眼の炎症疾患です。原因は梅毒などの感染もありますが、サルコイドーシス、べ—チェット病、原田病といった膠原病が原因となる非感染性のものもあります。専門病院がそれほど多くなく、多数の患者さんを紹介いただいております。膠原病と関連することから当院のリウマチ膠原病内科とも連携し、同日に両科とも受診できるようにするなど、患者さんの負担を減らす配慮もしています。ぶどう膜炎は炎症によって、硝子体が混濁し、飛蚊症状が出ますが、眼の悪性リンパ腫の症状とも類似しており、診ただけでは判断が困難で、硝子体手術による生検が必要な場合があります。悪性リンパ腫であれば眼だけではなく全身の治療が必要になり、血液内科と連携しながら抗がん剤治療と眼の硝子体注射を並行して行います。

雲井 (弥) 私は神経眼科と斜視弱視治療が専門で、どちらも眼球運動障害が関連しており、大人であれば脳神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺などで片眼が動きにくくなり、物が二重に見える複視の症状が出ます。原因は外傷、脳梗塞などによる血流障害、脳腫瘍による神経の圧迫、甲状腺疾患が影響することもあり、脳神経外科や糖尿病・内分泌内科と連携して治療を行います。子どもの場合は、眼球運動障害や眼の位置の異常で内斜視・外斜視が出て、両眼で見る力が育たないことがあります。
弱視は強度の遠視や屈折異常により視力が悪くなるもので、こちらも放置していると両眼視が育たないので、早期発見・早期治療で正常な眼に近づける必要があります。当院では4名の常勤の視能訓練士が治療にあたっています。内斜視はスマホやゲーム画面を長時間近くで見ることでも起き、10代、20代の方にも増えています。画面から距離をとる、ゲームの時間を制限するなどの対応を早めにすれば戻りますが、対応が遅いと手術になることもあるので注意が必要です。
雲井 (美) 網膜硝子体の疾患である網膜剥離は、早急に手術を要します。また糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性などが原因となって硝子体出血を起こすことがあり、原因が特定できない場合は早めに手術で出血を取り除き、原因を調べる必要があります。加齢黄斑変性による網膜の出血が大きい場合は「t-PA血栓溶解剤」の注射が有効です。

専門外来を開設し門戸の広い診療体制
中井 ぶどう膜炎に加えてアレルギー性結膜炎も専門にしております。アレルギー性結膜炎には季節性、春季カタルなどさまざまなタイプがあり、ステロイドや免疫抑制剤点眼などを組み合わせた治療を行いますが、特にアトピー性角結膜炎については皮膚科への紹介をすることもあります。患者さんの中にはご自身がアトピ—性皮膚炎であることを認識していなかったり、適切な治療を受けていない方もおられるので、結膜炎の治療だけでなく根本的な治療を受けられるよう誘導しています。

上江田 甲状腺疾患によって眼球が突出したり視神経を圧迫して視力が低下する甲状腺眼症の治療は選択肢が少なく、ステロイドを点滴するステロイドパルスが主な治療法でした。しかし最近、ステロイドよりも副作用が少ない「テッペーザ」という新しい薬が登場しました。当院ではこの薬をいち早く取り入れ、大阪大学医学部の森本壮先生にこ協力いただきながら治療を行っています。
甲状腺眼症を扱う病院はそれほど多くなく、患者さんご自身が放置していたり、そもそも発症に気づいていない方もおられます。
当院では糖尿病・内分泌内科と連携しながら負担の少ない新しい治療を提供できるので、今まで治療されていなかった方もこの機会にぜひ受けていただきたいですね。
中井 ぶどう膜炎、斜視弱視、アレルギー性結膜炎、甲状腺眼症については外来を設け、より専門性の高い治療を提供しています。
初期診療から専門医療につなげる
岩本 白内障の手術も、入院・日帰りともに行っています。当院では単焦点の眼内レンズ、単焦点レンズよりも焦点深度が大きい、焦点距離拡張型レンズ、遠・中・近どの距離でも、メガネなしでよく見える多焦点レンズと多種類のレンズを積極的に扱っています。
生活の中で読書などの手元か、それとも遠くを見ることを重視するか、メガネで補うことは許容できるかなど、患者さんのライフスタイルや要望に応じたレンズを選定し、QOL (生活の質)を高められる白内障手術に取り組んでいます。


濱本 豊富な種類の眼内レンズや先ほどのテッペ—ザなど、中井医師は新しい治療を取り入れることに積極的です。それだけバリエーション豊富な治療を受けられるのが、当院の眼科の特長だと思います。
取材日:2025年6月



